『応援団』・『EBA』比較語り
―'05年7月28日、『押忍!闘え!応援団』発売。
―'06年11月6日、『Elite Beat Agents』発売。
NintendoDSの爆発的ヒット以来、数あまたのゲーム作品が世の中にリリースされる中、
一部のファンのハーツをがっちりわしづかみにし、今でも不動の人気を誇る音楽ゲー
ソフトである。(売り上げ的にはアレだが)
▼応援団
・公式⇒http://www.nintendo.co.jp/ds/aosj/index.html
・このざま⇒amazon:押忍!闘え!応援団
▼EBA
・公式⇒http://e3src.nintendo.com/games/ds/elite_beat_agents/
日本で応援団が発売された当時、その作品の評判は海を渡り、日本独特の「応援団」
というスタイルを知らない文化圏で、日本語など読めない、話せない言語圏で、J-POP
など届かない音楽市場圏で、多くのファンを魅了し、熱狂させた。
そして、ついに海外版応援団、『Elite Beat Agents』が北米で堂々リリースされた。
今度は英語や洋楽になじみのない、日本の応援団ファンが『Elite Beat Agents』に
熱狂されるこことなった。
この物語は、その応援団ファンの一人であり、またEBAに魅せられてしまったうちの一
人であるだちおがその素晴らしさをいかんなく語る物語である・・・。
いや、っていうか、双方を比較して語ってみるだけです。
ネタバレ多々あるので、これからプレイしようと思っている人は気を付けてね!
▼ようつべ動画
<応援団>
<EBA>
■ベースとなるコンセプト
応援団並びにEBAの詳しいゲーム概要は上記にリンクした公式HPの通り。
根幹となるコンセプトは、
「悩みを抱えた人やピンチに陥っている人のもとにかけつけて音楽に合わせて応援する」
というもので双方共通している。
普通、ゲームプレイヤーは自らが悪の組織に立ち向かう勇者になったりして課題解決する
当事者になるものだが、このゲームでは「課題解決する当事者の応援をする集団」にプレ
イヤーが成り代わるというという他にあまり類を見ないものとなっている。
応援団 | EBA | |
---|---|---|
コンセプト | おバカ熱い | おバカクール |
バックボーン | 正体不明の応援集団 | 政府の秘密組織 |
応援手法 | 応援で力づける | 歌って踊って音楽のパワーで力づける |
組織構成 | 応援団&チアガール | Commander&Agents&Divas |
トップ | 団長 | 司令官 |
登場の合図 | おうえんだーん! | Heeeeaaalp!&Agents are GO! |
双方とも共通する点として、設定・ストーリー・デザインすべてにわたって「おバカ(シュ
ール)」であるということである。それはもう見ていて気持ちよくなるくらいの清々しいバ
カっぷりを見せてくれるが、それがこの作品の土台であり人気要素ともなっている。
しかし、下記のようなコンセプト属性の違いにより、シュールさの性質も若干の違いを見せ
ている。
▼応援団⇒熱い
とにかく「熱さ」を追求したコンセプト。
いまどき応援団が前面に出てくる時点ですでに暑苦しく、シュール臭をぷんぷんと感じるこ
とができる。
「応援団」と来れば学生の集団を思い浮かべることが多いかと思うが、設定上、彼らは学生
ではないらしく、その正体や素性、普段何をしている人たちなのかは一切不明。
困った人たちの助けを呼ぶ声に呼応してどこからともなく現れてはアツい応援を繰り広げて
くれる熱血漢ヒーローということになっている。
応援団ということ以外全てナゾである点にシュールっぷりが爆発していると見ることができる。
尚、プレイヤーへのご褒美とばかりにチアガールも用意されている。
▼EBA⇒クール
一方で、同じくおバカを主軸としながらもEBAが追求するのはガイジンさんをして「イケテルネ」
と言わしめようとするスタイル。
いでたちが黒尽くめであることは応援団の面々と変わりないが、こちらはスタイリッシュなスー
ツをパリッと着こなしたガイたちの集団である。
その正体は政府の秘密機関とされており、彼らの困ったひとたちに対するサポートは「公務」と
されている点で一切が謎の応援団とは異なる。
また、やっていることは応援団と変わりがないのだが、応援団ではないので、設定上は歌って踊
ることで困った人々に音楽パワーを与える、ということになっている。
「司令官」という職分のおっさんがおり、彼が困った人々を見つけ出してエージェントに出動命
令を下す。呼ばれて飛び出る応援団とは大きく違う。
公的に認められているというバックボーンと司令官の存在というある程度秩序立てられた組織構
成に、『応援団』の正体不明さから感じられるシュール臭さはないが、こんな組織がおおまじめ
に国務として公認されている上、「秘密組織」とされているはずなのに全然秘密でもなんでもな
い扱いを受けている点、『応援団』とは別のシュールさを見出すことができる。
尚、EBAでもご褒美とばかりにDivasというチアガール然とした歌姫集団が用意されている。
■システム面
応援団 | EBA | |
---|---|---|
曲数(エピソード数) | 15曲 | 19曲 |
難易度のモード | 4つ | 4つ+α |
隠しエピソード | ない | ある |
前奏のスキップ | できない | できる |
達成度の違い | ない | ある |
ゲームオーバー時のリプレイ | できない | できる |
クリア後の成績表示のスキップ | できない | できる |
クリア後のリプレイデータの保存 | できない | できる |
スコア一覧確認 | ない | ある |
グラフィックギャラリー | ない | ある |
振動機能 | ない | ある |
一目でわかるとおり、後発のEBAの方が当然のように強化されまくっている。
特筆すべきはスキップとリプレイ周りで、この辺は先行作の応援団にはサポートされていない
機能であり、中身の出来がよいだけに惜しむ声が多かった。次作を開発するにあたり、前作の
欠点・弱点を全てフォローしてくるあたり、シッポをつかまれると力が出ないというサイヤ人
特有の弱点をしっかり克服して地球にやってきたナッパのような抜かりなさが見られる。
また、「ゲームの要所要所で×判定されているのにクリア後のストーリーが同じなのには違和
感を感じる」という声に対しても、「大成功」「成功」と何段階かの達成度をつけ、それに応
じてクリア後のストーリーの(ごく)一部を変えて対処している。
ちなみに、各エピソード全て○判定でクリアすると大成功となり、ご褒美として2画面ぶち抜
きの一枚絵が表示される。自らの応援(プレイ)でハッピーエンドをもたらした手応えを明確
に伝える手法となっており、ちょっとしたうれしい改善。
尚、EBAでは選曲やエピソードが増えたにもかかわらず、グラフィックや音質もかなり強化され
ている。何やら『応援団』よりも高容量のカードを使っているようだ。
グラフィックの強化については、AgentsたちのイカしたダンシンとDivasプレイ時にピンチに陥
ると見られるDiva面々の萌え描写をご覧いただければ百聞は一見に如かずであろう。
音質についてはサウンドの厚みが増しており、特にEBAでの選曲はギターをうねらす楽曲が多い
ため、プレイ中の快感性脳汁分泌に何役も買っている。
また、対戦機能もEBAでは強化されており、自分の保存したリプレイデータと争う「ゴースト対
戦」があることにより、過去の自分の弾き出した記録との対戦プレイが一人でも可能となってい
る。ゴースト対戦では他人のゴーストをDLすることも可能となっており、それによりさらに楽
しみの幅が広がっている。本編を全て終えてしまった人でも末永く楽しむことができるようにし
た良改善と言えるだろう。
■登場シーン
応援団 | EBA |
---|---|
どこからどのように現れるかわからない | 何かの乗り物に乗って現れる |
このシリーズの魅力の一つとして、応援団やAgentsたちがゲームの開始時にどのように登場する
かという点がある。
シュールさで言えば、個人的に『応援団』の方に軍配を上げたい。
▼応援団⇒困った人が助けを求めるとどこからともなく現れてそこにいる
突然茶の間や日中のオフィスや走行中の電車のトビラを乱暴に開け放って現れたり、むさ苦しい
男なのに女子高の教室内で堂々と座っていたり、選挙人の演説カーや祭りの屋台からひょっこり
現れたり、すぐそばで競馬に興じていたり、陶芸をしていたり、ラーメンを食していたり、次元
の渦に引き込まれたりなど、その種類はバラエティーに富み、神出鬼没の桜木花道に驚愕する王
者山王ばりに「ちょっwww何でそこにいるwwww」という愉快なツッコミの機会をプレイヤ
ーに与えてくれる。
しかも、応援団という職分である彼らの立ち居振る舞いが、いかなるシチュエーションであろう
とも常に力強く威風堂々としている点がシュールさ増量の効果を引き立てている。
▼EBA⇒何かの乗り物に乗って現れる
登場自体が「司令官の出動命令」という過程を要するため、常に「困っている人の現場に駆けつけ
る」というスタイルが採られる。
駆けつける際はヘリコプターやエンジン付バナナボート、クルマ、アドバルーン、背負い式ロケット、
バイク、ジェットコースター、馬車などその場の状況に応じた様々な乗り物に乗ってやってくるが、
いずれも常識の範疇に収まる乗り物であるため、乗り物自体にはシュール臭さはあまり感じられない。
『応援団』同様に過去の時代に遡るエピソードがあるが、前作ではタイムスリップする描写をきちん
と描く一方、EBAではそのような描写はなく、平然と馬車に乗って現れる。
そんなこんなからEBAでは、Agentsたちを「何に乗せて登場させるか」に神経を注いでいることが見て
取れる。
EBAの登場シーンで演出される要素は、イカしたマシーンに乗って颯爽と現れるAgentsたちのクールさ
であり、パリっとしたスーツで身を固めたスラっとしたガイたちがババーンと現れるかっこよさにある
と考えた方がよいかもしれない。
どちらかといえば、こんなしょうもなシチュエーションにそんなおおげさな乗りモンで現れんなよ、
というところにシュールさを見出す方が得策か。
ともかく、応援団では「どこから現れるか」、EBAでは「何に乗って現れるか」という楽しみをプレーヤー
に提供してくれていると理解することができる。
■応援開始
応援団 | EBA | |
---|---|---|
困った人への第一声 | 押忍! | 無声(☆マーク) |
それを受けた人々の反応 | 炎を出して闘志を燃やす | 明るさ・陽気さを取り戻して踊る |
開始の掛け声 | 行くぜ!サン・ニ・イチ!それ! | Are you ready!スリー・トゥー・ワン!GO! |
※『応援団』チアガールの第一声は「GO!」
※『応援団』チアガールの開始の掛け声は「行くわよ!スリー・トゥー・ワン!GO!」
一つのエピソード開始〜終了までの流れは両作とも基本的に変わらないが、開始前に↑のよう
な違いがある。
▼応援団⇒「暑さ・熱さ」の演出が重視されている
「応援団」なのでひたすら「押忍!」が多用されるが、その掛け声に元気づけられた各エピソ
ードの出演者たちは、メラメラと闘魂し、やたらとよく燃える。
公式HPの開発者インタビューにもあるが、暑苦しく見える黒と赤のコントラストを故意的に多
用しており、実際それらの演出がうまく功を奏している。
▼EBA⇒炎は上がらない。☆マークが作品全体の一つのモチーフとなっており、☆が多用される
カラーリングもオレンジや黄色など明るく元気で陽気な雰囲気作りが行われている。
EBAの☆に励まされた人々は共通して、満面の笑顔で両腕を空に掲げて上体全体を左右に大きく
振る動作をする。各エピソード、ゲームの進行に合わせて、出演者達が次々とこの動作の輪に
加わって行き、賑やかな絵となっていく。
以上のようにして、「熱い応援で力を与える」と「シンギン&ダンシンによる音楽パワーで力
づける」の違いを使い分けている。
困った出演者たちが気合を入れ直された後で、次に応援団やAgentsたちはプレイヤーに向けて
気合を込める合図を送る。ゲーム開始の掛け声である。この掛け声がまた絶妙なタイミングで
掛けられるため、プレイを続けていると原曲を聴いていても脳内で勝手に再生されるという幻
聴症状を訴えるファンも多い。
■応援風景
応援団 | EBA | |
---|---|---|
マーカーをヒットさせたときの音 | 太鼓・鈴など | ドラムなど |
掛け声 | 押忍!はっ!など | ヘイ!フォー!など |
コンボ達成時 | 肖像のカットイン+炎 | 肖像のカットイン |
マーカーは両作とも同じである。『応援団』は「回転盤」が多い傾向があり、『EBA』は複数重
なったマーカーが多い傾向があると言えるかもしれない。
異なるのはヒットさせたときに発する音である。
▼応援団⇒当然ながら応援団道具が用いられる
派手な破裂音とシャンシャンという鈴の音が絶妙なハーモニーをかもしており、爽快感満天である。
中毒性があり、太鼓や鈴の音がないと原曲を聴けないと訴える者が続出。
▼EBA⇒応援団に比べると乾いたコンパクトな打撃音がする
鈴の音はない。『応援団』から『EBA』に移行した当初はそこはかとない寂しさを感じるが、
プレイしている間に気にならなくなる。EBAではハードな曲でスピーディーにどんぱちタッチ
することになるので十分な爽快感が得られるのだ。むしろシンプルな打撃音のよさがバック
に流れる演奏ともバツグンにマッチしていると感じられるようになる。
応援団並びにAgentsたちのパフォーマンスにも当然ながら大きな違いが見られる。
▼『応援団』⇒「応援」
「応援団」なのだから当然か。
▼EBA⇒「ダンス」
EBAでは、「応援の型」という縛りから自由になり、やたらとよく跳ねよく踊る。アクロバ
ティックな動きをこれでもかと見せてくれる。グラフィックの強化によりその雄姿が一層
堪能できる。
一見チアガール然としたDivasでは横に縦にと高速な腰振りを披露する。前作『応援団』の
チアガールは「チアガール」に忠実なしょんべん臭い若さに溢れるパフォーマンスであった
が、EBAでDivaとなった彼女らが魅せるのは妖艶なアダルティな世界だ。全年齢でいいのか、
コレ?
ということで、『応援団』の「応援」というある意味1パターンなパフォーマンスと打って
変わり、EBAではAgentsにせよDivaにせよ、彼らのパフォーマンスも各曲ごとに一度はよく
眺めておきたい要素となる。彼らに完璧に躍らせてリプレイデータに収めて鑑賞できるよう
にするためにも、失敗しないようにとプレイに熱が入るのである。
『応援団』⇒『EBA』移行の最初に寂しく感じるのは、EBAにはコンボ達成時の「炎」演出が
ないこと。
しかし、EBAではそれほど「熱さ」を求めているわけではないし、彼らのバリエーションに富む
ダンス・パフォーマンスを堪能させるという目的から画面が多少見づらくなる炎演出を省いたの
ではないかと推測できる。言い方を換えれば、応援団ではパフォーマンス・バリエーションが
「応援の型」に限られる反面、メラメラと燃える炎による「熱さ」をいかんなくたっぷり味わえ
る仕様になっていると言えよう。
「応援成功」「応援失敗」「感動エピソード」「最終面」比較が続きます☆